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月詠瑠那と怪しげなオッドアイ
放課後の保健室。静けさの中、天音梨花はカルテを片づけていた。 ふと、扉が開いて、月詠瑠那がふわりと現れた。白百合の香りとともに、蝋燭の灯のように静かな気配が流れ込む。 「瑠那さん……?」 違和感。 その瞳――左右で、色が違う。 左は深紅。いつも通り。けれど、右は――透きとおる蒼。 梨花の背筋に、ひやりと風が走った。 「今日は少し……違って見えるんです。世界が」 瑠那は、ゆっくり笑った。「この目、魅亜と“交換”してみたの。ほんの一日だけ」 「……えっ、か、交換って……え、目を?」 「物語の世界じゃ、よくあることでしょう?」 赤と青。まるでふたつの記憶がぶつかり合うような視線に、梨花は息を詰めた。 「でも……なぜ、そんなことを?」 「この目で見てみたかったの。“消えたはずの景色”をね」 瑠那は、保健室の窓際に立ち、外を眺める。「たとえば……私の存在が、名簿から消された日の夕焼けとか」 言いながら、彼女の蒼い目がきらりと揺れた。 まるで、涙のように――記憶の断片をたどっているように。 「先生、この目で私を見てみて。ほら、どちらがほんものか……わかる?」 瑠那が一歩、梨花へとにじり寄る。 その瞬間、背後のカーテンがふわりと揺れて――そこに立っていたのは、月詠魅亜。無言で、彼女もオッドアイだった。 左が青。右が赤。 「ふふ……ふたりとも、同じ目をしてる、で、ですね……っ?」 梨花の声が震える。 どちらが姉で、どちらが妹か。どちらが“本物”で、どちらが“想い出”か。 目の奥に、引きずり込まれそうな不安が渦を巻く。 「先生も、目を貸してくれる?」 瑠那が囁く。「……一晩だけでいいの。私の、昔の記憶を覗いてほしいの」 ぱちん。 瞬きとともに、視界が暗転する――その最後の光景は、三人の少女が鏡の前で同じ瞳でお互いを見つめるている不思議な光景だった・・・
