一駅分の片想い/スマホ壁紙アーカイブ
【一駅分の片想い】 朝のホーム。 人の流れにまぎれて、私は今日も彼を探している。 同じ制服、同じ時間、同じ車両。 だけど、言葉を交わしたことはない。 電車に乗り込むと、少し離れた場所に彼の姿があった。 私はスマホの画面に視線を落としながら、こっそり視界の隅で彼を追う。 イヤホンから流れる歌のフレーズが、今日も胸にふわりと染み込んだ。 ドアが閉まり、車両が静かに揺れ始める。 彼が降りるのは次の駅。 あと3分、あとひと駅。 あと少しだけ、この片想いを抱いていられる。 やがて電車が停まり、ドアが開いた。 彼の背中は人の波にのまれて消えていった。 私はもう一度、スマホの画面に目を戻した。 「おはよう」とか、「今日は寒いね」とか、それだけでいいのに。 でも、きっと明日も言えないまま。 ──────── ★Xに別カットあります