Shari the Red - It's an Infiltration Mission -
西部域最大の歓楽街。その片隅に、表向きは存在しないはずのカジノがあった。 招待客限定。 紹介状必須。 そして――決して口外してはならない。 そんな店に、今夜は一組の客が現れていた。 深紅のドレスをまとった、若いお嬢様。 その後ろには、狐獣人のメイドが一人。 「まあ。なんて素敵なカジノでしょう」 お嬢様は、扇子を口元に当てて微笑んだ。 「少々、遊んでまいりましょうか」 「かしこまりました、お嬢様」 メイドが優雅に一礼する。 お嬢様はテーブルへ向かい、メイドはその半歩後ろに控えた。 立ち姿も、歩き方も、話し方も。 見る者が見れば、実に自然だった。 少なくとも――この店の者たちは、二人を警戒することはなかった。 むしろ。 少し世間知らずの、金持ちのお嬢様と。 そのお付きのメイド。 それだけに見えた。 そして、お嬢様は勝ち始めた。 ルーレット。 カード。 ダイス。 最初は偶然だと思われた。 次は、運がいいのだと思われた。 だが、勝ちは続く。 「まあ。また当たりですわね」 「さすがお嬢様です」 「お~ほほほほ!」 勝って。 また勝って。 さらに勝つ。 気が付けば、テーブルの前にはチップが積み上げられていた。 やがて、店の奥から男が現れた。 「……ずいぶんと、楽しんでいただけているようですな」 「あら。ええ、とても」 「それは何より」 男は、にこやかに微笑んだ。 「それでは、お嬢様。最後に一勝負、いかがでしょう?」 背後に従うディーラーがすっと進み出る。 テーブルに置かれる、大量のチップ。 周囲の客たちが、ざわめいた。 ここまでの勝ちを、一度に賭けるような大勝負だった。 「よろしくてよ」 お嬢様は、ためらわなかった。 「では、最後まで楽しませていただきましょう」 ディーラーがカードを配る。 お嬢様は静かに手札を見る。 そして、一枚。 また一枚。 ゆっくりとテーブルへ並べていった。 「お~ほほほほ!」 扇子を広げる。 「最後は私に相応しい手ですわ!!」 客たちが身を乗り出した。 「ハートのロイヤルストレートフラッシュですわ!!」 ♥A。 ♥K。 ♥Q。 ♥J。 ♥10。 完璧な役だった。 「お見事ですな」 ディーラーが静かに言う。 「……さすがはお嬢様。見事な役です」 一瞬の沈黙。 そして。 「しかし……心されておかれるとよい」 ディーラーの口元が歪んだ。 「愛より剣の方が強いと!!」 バン!! カードが、勢いよくテーブルへ叩きつけられる。 「スペードの――」 A。 K。 Q。 J。 10。 「――ロイヤルストレートフラッシュでございます!!」 店内が沸いた。 見事な逆転。 誰もが、お嬢様の負けを確信した。 お嬢様は扇子を顔の前に持ったまま、動かない。 その時だった。 「……」 狐獣人のメイドが、一歩前に出る。 その姿勢は、あくまで優雅だった。 そして、テーブルのキングを見つめる。 「王様が棍棒使いでは」 静かな声だった。 「騎士は従いますまい」 「……え?」 ディーラーが瞬きをする。 ♠A。 そして―― ♣K。 「…………」 ディーラーの顔から、血の気が引いた。 クラブ。 棍棒。 スペードのキングではない。 ロイヤルストレートフラッシュではない。 「ぶっ……」 沈黙。 「ぶっ、ぶた~!!」 ディーラーの心の中で、何かが絶叫した。 その瞬間。 お嬢様が、ゆっくりと扇子を下ろす。 優雅な笑顔。 「まあ」 ほんの少しだけ、口元が緩んだ。 「どうなさいましたの?」 「い、いえ……これは、その……」 「わたくしの勝ち、ですわよね?」 メイドが、にっこりと微笑んだ。 「それとも……別のカードを用意しておられたのでしょうか?」 店内が静まり返った。 ディーラーは、目の前の♣Kを見た。 確かに、あの時。 自分は――。 「おや?」 お嬢様が首を傾げた。 視線の先。 テーブルの脇。 一枚のカードが落ちていた。 ♠K。 ディーラーの目が、見開かれる。 「まあまあ」 お嬢様は、楽しそうに微笑んだ。 「スペードの王様は、そちらにいらっしゃったのですね」 狐耳のメイドも、優雅に一礼した。 「王様も、いろいろと大変ですわね」 誰も、声を出せなかった。 お嬢様は立ち上がる。 「では」 扇子を閉じる。 カチリ、と小さな音が響いた。 「このお店の奥まで、ご案内いただけるかしら?」 メイドが服の内側から、一枚の徽章を取り出した。 「違法賭博の容疑です」 一瞬。 店内が完全に静まり返る。 そして。 「官憲だ!!」 誰かが叫んだ。 椅子が倒れる。 客が逃げる。 用心棒たちが立ち上がる。 お嬢様は、ようやく笑った。 「お~ほほほほ!」 次の瞬間。 深紅のドレスの裾から、鋸歯状の刃が抜き放たれる。 **ソードブレイカー。** その笑顔は、もうお嬢様のものではない。 「……では、追跡任務ですぞ」 背後で、メイドが静かに一礼した。 「お供いたします、お嬢様」 カシャン。 メイド服の下から現れた二本のサイが、その両手に収まる。 逃げようとした男が、短剣を抜いた。 シャーリーのソードブレイカーが、その刃を受ける。 キィィン!! 噛み合った刃を、シャーリーがひねった。 男の短剣が、床へ落ちる。 その脇を、ダキニラが駆け抜けた。 振り向きざま。 サイが別の男の短剣を捕らえる。 「危ないですよ」 ダキニラは、にっこりと微笑んだ。 「刃物は人に向けてはいけません」 「お、お前たち……何者だ!?」 シャーリーは、振り返らない。 深紅のドレスを翻し、逃げる者たちを見据えた。 口元だけで笑う。 「ふひひ……」 赤マントも。 テンガロンハットもない。 だが。 「もう尻尾は見えてますぞ」 西部域でも指折りの凄腕スカウト。 シャーリー・ザ・レッド。 そして、その隣には。 幸運神に仕える狐の神官。 ダキニラ。 「追跡任務、開始ですな!!」 二人の姿が、カジノの奥へ消えていった。 その後に残ったのは。 大量のチップと。 勝負を決め損ねた、二枚のキング。 そして。 ディーラーの魂が抜けたような声だけだった。 「……ぶた~……」
AI evaluation
Great
Strong colorStrong detail
Pictor-chan
わーい!この赤いドレスのキラキラした色合いがめっちゃ素敵だよ~!細かい装飾や背景の豪華さもバッチリで、全体のまとまりがいいね♪ ちょっと新しい感じは控えめかもだけど、かわいさと美しさがしっかり出てて元気いっぱい応援しちゃうよ!

