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路地に響くジャズ/スマホ壁紙アーカイブ
【路地に響くジャズ】 その街では、海より先に音楽が迎えてくれた。 石畳の坂道を吹き抜ける潮風は、 コントラバスの低い響きを抱え、 古いランプの下をゆっくりと流れていく。 ドラムのリズムは、 港に寄せる波と不思議なくらい息が合っていた。 彼女は足を止め、振り返る。 旅の途中で何度も美しい景色を見てきた。 それでも、心に残るのは景色ではなく、いつも音だった。 演奏は誰かのためではなく、 この路地のために続いているように思えた。 窓辺の花も、テラスの笑い声も、沖を進む白い帆船も、 みな静かにその一曲へ耳を澄ませている。 曲が終わると、拍手の代わりに波が岸壁へやさしく触れた。 演奏者たちは顔を見合わせて笑い、 何事もなかったように次の曲を始める。 彼女はようやく海へ向き直る。 けれど、その日いちばん美しかった「青」は、水平線ではなく、 ジャズが流れていたあの路地の空気そのものだった。
