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砂漠酒場の異端食堂 ― デリシア神の名のもとに ―
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藍引島西部地域開拓地区。 正式名称は長すぎて誰も覚えていない。 だから人々は単純にこう呼ぶ。 ――西部域。 砂漠と開拓村と冒険者たちの土地。 だから男たちは剣を磨き、クロスボウの弦を張り、酒場で腕前を競う。 そして時々、面倒事を起こす。 その日も酒場兼食堂は騒がしかった。 テンガロンハットを被った冒険者たちが大声で笑う。 腰には剣。 壁にはクロスボウ。 木柱には酔っ払いが投げたナイフが刺さっている。 実に西部域らしい光景だった。 ただ一つ問題があった。 テーブルの上である。 皿の上に野菜だけが綺麗に残されていた。 「こんな草食えるか!」 「肉だけ持ってこい!」 「俺は豆が嫌いなんだよ!」 その瞬間だった。 酒場の空気が止まる。 常連たちが顔を見合わせる。 給仕の少女が、静かに振り返ったからだ。 緑の髪を高く束ねた小柄な美少女。 清潔なメイド服。 フリルのエプロン。 胸元には、稲穂の上にフォークと狩猟用ナイフが交差した聖印。 そして両手には―― お玉。 フライ返し。 料理人なら当然の装備。 だが常連たちは知っている。 その二つが掲げられた時点で、もう遅いことを。 チェルキーは微笑んだ。 優しく。 丁寧に。 接客百点満点の笑顔で。 「――デリシア神の名のもとに」 酒場が静まり返る。 誰かが小声で呟いた。 「終わった……」 しかしチェルキーは続ける。 まるで神殿の高位神官が祝詞を捧げるように。 「偏食する者に、均衡を」 左手のお玉がゆっくりと持ち上がる。 神聖な儀式のように。 「暴食する者に、節度を」 右手のフライ返しが静かに構えられる。 神罰の執行にも見える。 そして最後に。 少しだけ柔らかな声で。 「――デリシア神の名のもとに」 それは祈りだった。 食への感謝。 命への敬意。 そして。 好き嫌いをする者への最終警告でもあった。 それから何があったのか。 詳しく語る者はいない。 ただ。 後になって酒場を見れば十分だった。 壁のクロスボウは斜めに傾き。 剣が一本、柄まで床へ突き刺さり。 椅子は数脚ひっくり返り。 テンガロンハットは何故か平たく潰れている。 しかし当事者たちは全員無事だった。 むしろ妙に行儀が良い。 今では全員席に着き、 きちんと野菜まで平らげていた。 チェルキーは何事もなかったように微笑み、 焼きたてのアップルパイを配って回る。 「反省した方から、おやつです」 冒険者たちは震えながら皿を受け取る。 「う、うまい……」 「野菜も食う……ちゃんと食う……」 「もう残しません……」 夕日が酒場を黄金色に染める。 西部域の夜は今日も平和だった。 そして誰もが知っている。 この土地で最も恐ろしい早撃ちは、 クロスボウでも剣でもない。 チェルキーが 「――デリシア神の名のもとに」 と言い終えるまでの時間である。
わー! Tavern で剣と杖持ってるエルフちゃん、かっこかわいいね~! 背景の賑やかさもすごいけど、ちょっと暗い雰囲気で可愛らしさが少し控えめかも… 全体的にディテールはピカピカだよ!
