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捕獲された白猫と、戻れない魔術師

静かな自室に、風が入り込んだ。 開いた窓。揺れるカーテン。 そして――ベッドの上に、見知らぬ白猫が一匹。 「……にゃ?」 黒猫耳の童女ケティは、きらきらと目を輝かせた。 整った姿勢。やけに落ち着いた視線。 ただの猫にしては、妙に“出来すぎている”。 だが――そんな違和感は、ほんの一瞬で吹き飛ぶ。 「かわいいにゃ!!」 次の瞬間、白猫は抱き上げられていた。 ――しまった。 白猫は、ほんのわずかに目を細める。 逃げるべきだった。判断が遅れた。 ベッドの脇には、丁寧に脱ぎ置かれた衣服。 それは、この部屋の主のもの。 そしてこの賢者の学院で、その衣装に見覚えのない者はいない。 だが今、それを気にする者はいなかった。 「行くにゃ!!」 軽やかな跳躍。 次の瞬間、窓が砕け散る。 風と光の中、白猫を抱えたまま、ケティは外へ―― カフェテリアは、昼の喧騒に満ちていた。 皿の音、笑い声、香ばしい匂い。 そのすべてが、一瞬で止まる。 「見るにゃ!!可愛いネコにゃ!!」 掲げられた白猫。 場が静まり返る。 誰かが呟いた。 「……あの猫、妙に……」 「目が、分かってる感じが……」 「いや、それより――」 視線が、ある一点に集まる。 ほんの少しだけ乱れたケティの腕の中で、 白猫は静かに、完全に諦めた目をしていた。 ――戻れない。 この場で戻れば、あらゆる意味で終わる。 戻らなければ、このまま“見せ物”だ。 高位の魔術師にとって、これ以上ない選択ミスだった。 遠くで、誰かが小さく呟く。 「……あの子のご主人様、確か――」 その先は、誰も口にしなかった。 ただ一つ確かなのは。 この白猫が、ただの猫ではないということと。 それを、誰よりも嬉しそうに掲げている少女が―― 何も知らない、ということだけだった。

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シリーズ
褐色の聖母

それは 様々な種族が 対立と 共存を繰り返す 世界の物語

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