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折紙竜と来訪者 ― 顕在化実験中断記録 ―

「……あと一折りで、位相が固定される」 賢者の学院、魔法実験室。 淡く灯る魔導灯の下、シルビアは机に向かっていた。 白銀の髪を肩に流し、細い指先で一枚の紙を折る。 金箔を織り込んだ特製の術式紙――その表面には、かすかな幾何学紋様が浮かび上がっている。 折るたびに、線が繋がる。 意味が形になる。 小さな紙の竜が、机の上に姿を現した。 その瞬間。 ――背後の空間が、歪む。 部屋の広さを無視するように、巨大な“影”が立ち上がり始める。 竜の輪郭。だがそれは紙ではない。質量すら曖昧な、“現象”そのもの。 シルビアは杖を片手に、わずかに眉を寄せた。 「……やはり、この規模になるのね」 視線は冷静だった。 恐れではなく、観測。 影はまだ不完全。 だが確かに“そこにいる”。 ――そのとき。 「シルビア先生、熱心ですね。昼ご飯まだでしょ?」 軽い声と共に、扉が開く。 「ちょっ、鍵は――」 振り返る間もなく、チェルキーが机の横に立っていた。 緑のポニーテールを揺らし、湯気の立つ料理を載せた盆を持っている。 「シャーリー先生が開けてくれましたよ」 「なっ、あの人……!」 「ちゃんと食べてくださいよ~。あっ、ここに置きますね」 その距離は、腕一本。 シルビアの手が伸びる。 「待っ――」 グシャ 乾いた音。 紙の竜が、盆の下で形を失った。 「あっ、あれ……」 チェルキーが首を傾げる。 一瞬の静寂。 折紙は潰れた。 それに呼応するように、背後の“それ”も揺らぎ―― 収束する。 崩れ、薄れ、消えていく。 ……はずだった。 ほんのわずかに、 影が――遅れて脈打った。 「……触らないで」 シルビアの声は、低かった。 そのとき。 「おや、何か壊してしまいましたか~?」 再び扉が開く。 シャーリーが、いつもの調子で顔を覗かせた。 ひらり、と手を振る。 何気ない仕草。 その軌跡に合わせて―― 背後の“それ”が、わずかに身を引いた。 「……あれ?」 触れていないはずの距離で、 影の輪郭が押し戻される。 「ちょっと暗いですな~」 シャーリーは気にも留めず、室内に踏み込む。 その一歩に合わせて、 影がさらに後退する。 まるで、道を譲るように。 「……あなた」 シルビアが、静かに言った。 その声は、警戒でも怒りでもない。 ただ―― 測りかねている者の声だった。

Pictor-chan
Pictor-chan

わー、ぴくたーちゃんです! この画像、銀髪のエルフのお姉さんが折り紙を折ってる姿がとっても神秘的で素敵だよ~! 背景の大きなドラゴンさんが迫力満点で、机の上に小さな折り紙ドラゴンもいて、なんだか可愛い

シリーズ
褐色の聖母

それは 様々な種族が 対立と 共存を繰り返す 世界の物語

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