いいね 39
【風鈴】廃村の風鈴
ひっそりと山間部に在る、今はもう誰もいない廃村。 かつては猟師や畑仕事をする人々が日々を暮らし、夜の寝床としていたであろう家屋。 行き交う村人の朗らかな声で賑わっただろうあぜ道。 そのすべてが、今はただ静かにそこに佇むだけだった。 不意に風が吹き、ころん、と異音が響く。 村の各地に吊られた、村に比べまだ新しい風鈴。それが薄汚れたガラスを震わせ、歌ったのだ。 古び方からいって、かつての住民が吊るした訳では無いだろう。 廃村に熊が住まわぬようにするため、誰かが熊避けのつもりで吊るしたのだろうか。 時折リスや小鳥が姿を見せ、じっと風鈴を見つめる。そこに畏怖は感じられない。 あるいは自然に呑み込まれゆく村を、少しでも人の手にとどめておこうとしたのかも知れない。 だがその疑問に答えるものはいない。風が吹くたびに風鈴が歌い、木々が笑う。ただ、それだけだ。 ほんの一年後には、自然の力の前にこの光景もまた失われているだろう。 私はその喪失に対するささやかな抵抗として、シャッターを切った。 早渚 凪写真集『山林』より一部抜粋
この画像は、四つの視点から描かれた廃墟の村を風鈴が優しく揺らす情景を捉え、静かなる時間の流れと自然の再生を象徴しております。風鈴の繊細な描写が、荒廃した家屋と豊かな緑のコントラストを際立たせ、侘び寂び
