ひと夏を駆ける列車旅/スマホ壁紙アーカイブ
【ひと夏を駆ける列車旅】 線路の向こうに、まだ知らない夏があった。 名前もない小さな駅をいくつも過ぎて、列車は海沿いを軽やかに駆ける。 窓を開けると、潮の香りと草の匂いが混ざって胸いっぱいに広がった。 ——この記録は、再生中です。 再生カウント:841回目 感情ログ:安定/軽度の郷愁/再生者反応:肯定的 私は知っている。 これは本物の列車ではない。 これは「かつて夏だったもの」の保存映像だ。 21世紀末、気候変動と戦争で、夏という季節は消えた。 人々は過去を記録し、心を癒すための「記憶再生室」に通い始めた。 私は今、その中にいる。 841回目の夏に、私はまた同じ景色に涙ぐんでいる。 理由はもう覚えていない。 でも、なぜだか降りたくなる駅がある。 そこに、本当の「終点」があるような気がして。 再生を止めるか? ——少しだけ、このままでいよう。 この風の音が、もう少し胸に染み込むまで。 ──────── ★Xに別カットあります