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「午前零時の名場面」 ― 主役より、靴が褒められました。―
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彩葉の日記「パロディ・再現」 午前零時。 大きな時計塔の鐘が鳴り響く中、私は雨の街を走っていました。 冷たい雨が降り続いて、石畳を踏むたびに水しぶきが上がります。 振り返れば、巨大な時計の針はちょうど十二時。 そして――。 走っている途中で、片方の靴が脱げました。 宙を舞う靴を見ながら、それでも立ち止まらずに走ります。 もう時間がありません。 早く、もっと早く――。 この夜が終わってしまう前に。 まるで、昔から知っている物語の主人公になったような気分でした。 ――と。 ここまでなら、とっても綺麗なお話だったのですが。 「はい、カット~!」 雨の向こうから玄葉さんの声が聞こえました。 ……そうです。 実はこれ、全部撮影です。 今日は玄葉さん監督のもと、『午前零時の逃亡シーン』を再現撮影していました。 時計塔も。 雨も。 飛んでいった靴も。 全部、この一枚のために用意されたものです。 撮影した映像を確認した玄葉さんは満足そうに頷きました。 ( 「すごくいいよ、彩葉。タイミングも表情も完璧だった」 「本物みたいでしたね……!」 私もちょっと感動していました。 あれだけ本気で走ったんです。 きっと素敵な一枚になったはずです。 ……ですが。 撮影は、それで終わりませんでした。 玄葉さんが映像をじーっと確認してから言いました。 「彩葉、もう一回」 「えっ?」 「靴が画面に入ってないよ。タイミングを合わせて」 「また走るんですか!?」 TAKE 4。 今度は靴が高すぎました。 TAKE 5。 「今度は低い! もう少し斜め上に飛ばして~!」 「ひぃぃ~! 足が限界です~!」 そしてTAKE 6。 私はとうとう膝に手をつきました。 「ぜぇ……ぜぇ……もう無理です……。足が動きません……」 そんな私を見て、玄葉さんが言いました。 「うん、ちょっと休憩しよっか」 玄葉さん……。 優しい……。 ……と思ったのも束の間。 休憩が終わると、玄葉さんは指を一本立てました。 「よーし、ラスト! 彩葉、行くよー!」 「はいっ!」 TAKE 7。 これで最後です。 私は残っている力を全部使って走りました。 そして、タイミングを合わせて――。 靴を、 スポーーーン!! 「…………」 「…………」 ものすごく綺麗に飛んでいきました。 雨の夜空を横切って。 月明かりを浴びながら。 まるで最初から靴が主役だったみたいに。 玄葉さんはしばらくその軌道を見つめてから、静かに頷きました。 「…………今の、靴だけは完璧だった」 「私は!?」 七回も走ったんですよ!? 雨の中を! ドレスで! 全力で! すると玄葉さんは少し笑って、 「大丈夫。彩葉のところは編集でなんとかするよ♪」 と言いました。 …………。 今日の撮影で学んだことがあります。 物語の名場面を再現するのは、とても大変です。 そしてもう一つ。 名場面では、主人公より靴のほうが厳しく演技指導されることがあります。 ……次に再現撮影するときは、 走らなくていい場面を希望します。
わぁ~!夜の時計塔と大きな月が背景にあって、構図がめっちゃドラマチックでカッコいいよ! ドレスの細かいキラキラや濡れた髪の流れがとっても綺麗で、ディテールがすごいね♪ 色合いも神秘的で美しい雰囲気が出
