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アイピク島活編 第十話 「ふたりになった日」と「玄葉」
# 彩葉の日記 10日目 ### 「ふたりになった日」 昨日、森で出会った女の人。 自分の名前も、どこから来たのかも、何も思い出せないみたいだった。 そんな人を一人にしておくなんて、できなかった。 だって私も、この島に来たばかりのころは一人だったから。 何を食べればいいのかも分からない。 どこに水があるのかも分からない。 夜になったらどうすればいいのかも分からない。 あのころの私と同じような顔をしていたから、 > 「とりあえず、一緒に行きませんか?」 って声をかけた。 少し驚いた顔で、 > 「……いいのか?」 って聞かれたけど。 もちろんです。 こう見えて私、この島ではちょっと先輩なんですよ? 水場だって知ってる。 食べられるものだって、少しは分かる。 料理もできる。 ……焦がすこともあるけど。 それから、自慢の相棒も紹介した。 自分で作った杖を見せたら、 > 「……随分たくましいんだな。」 って言ってもらえた。 えへへ。 なんだかちょっと嬉しかった。 私、本当に少しは成長できてるのかも。 でも不思議なこともあった。 私が危ない場所へ近づいたとき、 > 「待て。そこは危ない。」 って、すぐに止めてくれた。 本人も「あれ?」って顔をしてた。 私たち、昨日会ったばかりなのに。 …………不思議な人。 休憩しているとき、もっと大きな問題に気づいた。 名前が分からないから、ずっと「あなた」って呼ぶしかない。 それはさすがに困る。 だから―― 私が名前をつけることにした。 私が**彩葉(あやは)**だから。 私とは見た目が反対みたいな、黒くて深い色を持つこの人には―― > **「玄葉(くろは)」** 玄に、私と同じ「葉」。 そう伝えたら、何度か自分で、 > 「……玄葉。」 > > 「玄葉……か。」 って確かめていた。 そして、少しだけ笑って、 > 「悪くない。」 って。 よかった。 すごく、よかった。 今日までこの人が誰だったのか、私は知らない。 本人にも分からない。 でも今日からは―― **玄葉さん。** そして私は、彩葉。 改めて名前を呼び合って、一緒に森を歩き始めた。 昨日までは一人だった。 今日からは二人。 ……ただ。 さっきから時々、 ものすっっっごく視線を感じる。 振り返っても誰もいない。 玄葉さんも感じてるみたいなんだけど……。 …………。 無人島なんですよね? **本当に無人島なんですよね、ここ!?** # 玄葉の日記 1日目 ### 「玄葉」 彩葉が何かを書いていた。 聞けば「日記」というものらしい。 この島で起きたことや、そのとき自分が思ったことを残しているという。 私は日記を書いていたことがあるのだろうか。 分からない。 そもそも昨日までの自分について、何一つ分からない。 だから―― **私も書くことにした。** 彩葉の真似だ。 本人には言わないでおこう。 今日、一つ分かったことがある。 あの子の名前は、 **彩葉。** そしてもう一つ。 私にも名前ができた。 > **玄葉。** 彩葉がつけてくれた。 自分とは反対みたいだから、と。 玄という字に、彩葉と同じ「葉」。 玄葉。 何度か口にしてみた。 不思議だ。 昨日まで使っていた名前ではないはずなのに。 嫌ではない。 むしろ―― 妙に馴染む。 何も持っていなかった私が、この島で初めてもらったもの。 それが名前だった。 だから、この名前は忘れたくない。 …………。 「忘れる」という言葉を書くと、少し怖くなる。 私は既に、自分のことを全部忘れている。 名前も。 過去も。 誰と一緒にいたのかも。 何を大切にしていたのかも。 また忘れたら? 今日のことまで消えてしまったら? そう考えて―― 日記を書く意味が、少し分かった。 たとえ私が忘れても、 **ここに書いたことは残る。** だから記録しておく。 今日、私は玄葉になった。 そして―― 彩葉と一緒に歩くことになった。 それから、もう一つ。 今日、彩葉が危険な場所へ近づいた。 気づいたときには手を伸ばしていた。 > 「待て。そこは危ない。」 考えてから言ったわけじゃない。 身体が勝手に動いた。 なぜだ? 昨日会ったばかりの相手だ。 なのに―― あの子が危ないと思った瞬間、 ひどく嫌な感じがした。 理由は分からない。 分からないことばかりだ。 だが、今はそれでいい。 これから一つずつ知っていけばいい。 自分のことも。 この島のことも。 そして―― **彩葉のことも。** …………。 ところで。 あの子には言わなかったが。 森の中からこちらを見ていた何か。 あれは気のせいではないと思う。 たぶん猫だ。 一匹ではない。 …………かなりいる。 なぜ隠れている? まあ、襲ってくる様子もない。 放っておこう。 彩葉には―― **もう少し「気のせい」ということにしておく。** ――玄葉 日記、一日目。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今まで裏場面としてBOSSと部下のやり取りを裏編で毎日投稿していましたが、 元BOSSが表舞台に出て玄葉として登場したので、 裏編の代わりに彩葉視点の日記に加え、 玄葉視点の日記も追加しております。 かなーり文章量長くなってしまいますが、 イラストの描写やセリフ回しで補完できてないところも日記に含めているので、 読んで楽しんでいただけるものになっていると思っております。 13日にみやびさんから素敵なイラストを投稿していただいたので、冒頭と最後にスペシャルゲストとして使わせていただきました。 ありがとうございます!今後もシナリオに組み込めるような展開があった時にはひそかに登場するかもしれません!(予定は未定) お借りしたイラスト https://www.aipictors.com/posts/784708 みやびさんのマイページ https://www.aipictors.com/users/1909dash
森のファンタジーシーンがきれいに描かれてて、衣装のディテールや光の表現が72点くらいしっかりしてるよ! 美しさ73点で雰囲気もクール68点だね。オリジナル性は55点だからもうちょっとユニークさが欲しい
