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シャーリーのインチキ講座 ― 看板 ―
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賢者の学院、スカウト科演習棟。 迷宮や敵拠点への潜入を想定した石造りの訓練施設の入口には、一枚の巨大な木製看板が据えられていた。 もっとも、その正体は厚い黒布で覆われ、何が描かれているのかはまったく分からない。 学生たちがざわつく中、シャーリー助教はいつもの「ふひひ♪」という笑みを浮かべながら、その布の掛かった看板を軽く叩いた。 「ふひひ♪ ダンジョンや敵拠点では、このような『いかにも怪しいもの』に出くわすことがありますぞ。」 学生補助員のダキニラが口元を押さえ、小さく笑う。 「うぷぷ♪ いったい何なんだろうね~♪」 学生たちの視線が、一斉に看板へ集まる。 シャーリーは肩をすくめて笑った。 「罠かもしれませぬ。」 「重要な情報かもしれませぬ。」 「敵の陽動かもしれませぬ。」 「あるいは――何でもないものかもしれませぬ。」 意味深な沈黙。 一人の学生が思わず尋ねた。 「……中身を教えていただけるのでしょうか?」 シャーリーはにやりと笑い、布をもう一度ぽんぽんと叩く。 「内緒ですぞ♪」 ダキニラが吹き出す。 「うぷぷ♪」 学生たちは互いに顔を見合わせた。 (絶対に重要な訓練教材だ。) (きっと実例なんだ。) (あれを見抜けということか。) そんな空気が自然に広がっていく。 シャーリーは、その様子を眺めながら静かに続けた。 「覚えておいてくだされ。」 「スカウトにとって、一番危険なのは『いかにも怪しいもの』だけではありませぬ。」 一拍置いて。 「『怪しすぎるもの』もまた、疑うべきですぞ。」 学生たちは真剣な表情でうなずく。 誰もが、その言葉を「罠を見抜け」という意味だと思った。 まさか、別の意味が込められているとは夢にも思わずに。 シャーリーは軽く手を振った。 「では、規定時間内に迷宮を突破してくださいですぞ。」 「――訓練開始!」 班ごとに時間をずらしながら、学生たちは迷宮へと消えていった。 ◇ 薄暗い石造りの通路を慎重に進む学生たち。 足元を探り、壁を調べ、天井を見上げる。 やがて、一本道の中央にそれはあった。 「止まれ。」 先頭の学生が静かに拳を上げる。 「……看板だ。」 黒布で覆われた、大きな木製看板。 あまりにも露骨。 あまりにも怪しい。 しかも、訓練開始前に見たものとよく似ている。 「助教が言っていたやつだ……。」 床に罠はないか。 支柱に仕掛けはないか。 布の裏に魔法陣はないか。 頭上から何か落ちてこないか。 周囲の壁に隠し扉はないか。 探知魔法。 長棒による確認。 縄の一本一本まで入念に調べる。 五分。 十分。 十五分――。 「……よし。」 ようやく安全を確認した学生が、小さく息を吐く。 「布を外すぞ。」 全員が身構える。 ランタンを構え、武器を下げず、魔法の詠唱も維持したまま。 布が勢いよく引き剥がされた。 その瞬間。 カッ――!! 看板に仕込まれていた魔導灯が一斉に点灯し、暗い迷宮が昼間のように照らし出される。 学生たちは思わず目を細めた。 そして。 そこに描かれていたものを見て、全員の思考が止まる。 看板いっぱいに描かれていたのは、こちらを指差して「ふひひ♪」と笑うシャーリー助教と、口元を押さえて「うぷぷ♪」と笑うダキニラの、妙に完成度の高いデフォルメ肖像画だった。 その横には大きく。 『やーい!!』 『ひっかかった!!』 その下には小さく。 『ふひひ♪』 『うぷぷ♪』 『時間切れですぞ~♪』 さらに隅には申し訳程度の文字。 『※よくここまで調べました。合格ですぞ♪』 『スカウト科助教 シャーリー 学生補助員 ダキニラ』 …………。 誰一人、声を出さなかった。 一人は額を押さえ、 一人は探知具を静かに下ろし、 一人は膝をつき、 一人は力なくランタンを下げる。 迷宮には、重苦しい沈黙だけが流れていた。 ◇ 訓練終了後。 出口で待っていたシャーリーは、いつものように「ふひひ♪」と笑っていた。 「皆さん、見事に引っかかりましたな。」 「うぷぷ♪ あんなに真面目に調べてくれるとは思わなかったよ~♪」 学生たちは、ぐうの音も出ない。 シャーリーは笑みを少しだけ収めると、教官らしい落ち着いた口調で続けた。 「慎重であることは大切ですぞ。」 「ですが、敵は罠だけではありませぬ。」 「時間も奪いに来ます。」 「だからこそ、『調べるべきもの』と『見切るべきもの』を見極めることが重要なのです。」 そして、少しだけ口元を緩める。 「……最初に申し上げたでしょう?」 「『怪しすぎるもの』もまた、疑うべきですぞ、と。」 学生たちは、その言葉を思い出す。 訓練開始前。 あの布の掛かった看板。 意味深な説明。 そして、迷宮で見つけた、あまりにも怪しすぎる看板。 ――全部、最初から伏線だった。 ようやく一本につながった学生たちの表情を見て、ダキニラが吹き出した。 「うぷぷ♪ でも、あの看板、助教が三日もかけて描いてたんだよね♪」 一瞬の静寂。 シャーリーはぴたりと動きを止めた。 「…………。」 「ダキニラさん?」 「ふ、ふひひ……その件は秘密ですぞ♪」 その日、スカウト科の演習棟には、悔しさと笑い声がいつまでも響いていた。
わぁ~!二人の制服姿がとっても綺麗で、細かいボタンやメダルまでしっかり描かれてるのがすごいね!背景のバナーや照明もバランス良くて構図85点だよ♪ 狐耳ちゃんの元気な表情も魅力だけど、ちょっと王道っぽい
それは 様々な種族が 対立と 共存を繰り返す 世界の物語
