1 / 3
いいね 88
蒼穹のフロンティア 番外編【廃都の静寂に響く、必中の鼓動】
88
崩れかけた鉄骨と錆びついたドラム缶が並ぶ、打ち捨てられた廃工場。 かつての喧騒は消え、今はただ、滴る水音と風の唸りだけが支配している――。 その静寂を裂くように、アリシアは一歩踏み出した。 艶やかな黒のグローブに包まれた指先が、まっすぐこちらを捉える。 まるで照準器のように、逃げ場のない視線で。 「――ロックオン」 冗談めいた仕草のはずなのに、その一瞬で空気は張り詰める。 戦場で幾度も命を懸けてきた彼女の“本能”が、ただの遊びを許さない。 だが次の瞬間、わずかに口元が緩む。 それは戦士ではなく、一人の少女としての無邪気な余裕。 狙われているのは、命ではない。 けれど確実に撃ち抜かれてしまう―― 心の奥深くまで。
