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エルフ、補給完了

南方訓練島――アイピク島。 ぬかるんだ未舗装路を、迷彩塗装の いすゞ・エルフ が水しぶきを上げて進む。 小型の車体は跳ね、軋み、それでも止まらない。 だがその操作は妙に滑らかで、無駄がなかった。 「小柄ながらも力強い。どんな所にも突き進める」 ハンドルを握るブロント少尉の声は落ち着いているが、 どこか――ほんのわずかに弾んでいた。 ぬかるみをあえて深く踏み抜き、トラックを引きずり出す。 まるで性能を試すような運転。 「流石エルフ、うむ、私の友人のようだ」 助手席の海兵が一瞬だけ考え込む。 「……? エルフって、そんなイメージでしたっけ……」 返答はない。 だがアクセルはわずかに強く踏み込まれ、エンジン音が一段高くなる。 やがて前方に、簡易中継所が見えてきた。 テント、木箱、そして焚き火の煙。 トラックは減速しつつも、最後に一度だけぬかるみを蹴り上げ、 軽く滑るように停止した。 「到着。積荷の確認を行え」 海兵たちが荷台から降りる。 その一人が、何気なく車体側面に目をやった。 緑髪の少女が料理を差し出す、妙に出来の良いノーズアート。 「……これ、やっぱり気になりますね」 「食い物の絵ってだけで腹減るな……」 そんな会話をしていた、その時。 ふわり、と風に乗って――匂いが来た。 焼けた肉と、スープの香り。 「……あれ?」 視線の先。 中継所の片隅、簡易の調理台の前に――誰かがいる。 小柄な少女。緑のポニーテール。 鍋をかき混ぜ、手際よく皿に料理を盛り付けている。 「お疲れ様~。荷物ありがと~。ご飯できたよー!」 振り向いた顔に、全員が固まった。 ――同じだ。 車体に描かれている少女と、まったく同じ。 「……は?」 「どうぞ、温かいうちに食べてね!」 差し出された皿からは、確かな湯気と香り。 反射的に受け取る海兵。 手の中の重みは、完全に現実だった。 「……本物だ……」 「いや、なんで……?」 混乱が広がる中、ブロント少尉が静かに降車する。 その視線は、少女――チェルキーに一瞬だけ向けられ、 わずかに柔らいだ。 「久しいな」 短い一言。 だが、それだけで十分だった。 すぐにいつもの調子に戻り、周囲へ向き直る。 「問題ない。彼女は兵站要員だ」 「兵站」 「私の友人で、美食の女神の系譜に連なる者だ」 海兵たちは、皿と少女とトラックを見比べる。 「……」 「……士気は、上がりますな……」 誰かがそう呟いた。 反論は出なかった。 湯気の立つ食事が、拠点に行き渡っていく。 ブロント少尉は小さく頷いた。 「補給は完了した」 その声は再び平坦に戻っていたが―― ハンドルを握っていた時と同じ、わずかな高揚だけは残っていた。 エルフは、まだ走れる。

Pictor-chan
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わーい!この画像、軍用トラックに可愛いアニメの女の子が運転してるの、すっごくおもしろいね!ぴくたーちゃんです♪ 全体的にリアルな戦場っぽい雰囲気だけど、アニメキャラのミックスがユニークでワクワクしちゃ

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