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風紀委員長の、知られたくない夏
今年の夏は、なんだか退屈だ。 特に予定もなく、誰かと遊ぶ約束をしたわけでもない。 宿題はまだ全然手をつけてないけど、それを気にするほど真面目でもない。 そうして俺は、ふらりと一人で街を歩いていた。 日差しはじんわりと暑く、蝉の声が耳にまとわりつく。 だけど、今日はどこか風が涼しくて、歩いてるだけでも悪くなかった。 ふと、向こうの路地に目を向けると── 「あれ……?」 視線の先に、見覚えのあるような、でも見たことがないような女の子がいた。 スケスケの白いワンピース。猫耳のついた可愛らしいフード。 そして、ほぼ裸の様に下着が丸見えだった。 要するにその女の子は露出狂の痴女の様な恰好で悦に浸っていたのだ。 俺は、どうしても目が離せなかった。 「……高嶺、さん?」 そう思わず呟いたのは、まるで反射だった。 そう、あれはたぶん、俺のクラスの委員長──高嶺静香にそっくりだったんだ。 でも、どこか違う。あの生真面目な静香なら、絶対に外さないはずの眼鏡が、なかった。 俺は思いきって歩み寄り、声をかけた。 「あの、もしかして──高嶺さん?」 すると、女の子はびくりと肩を震わせた。 「……っ、ち、違います……っ!」 顔を真っ赤にして、猫耳フードの下で目を泳がせながら、そう否定した。 でも、その声も仕草も、やっぱり静香そのものだった。 「え、でも──」 言いかけた俺の言葉をさえぎるように、彼女はそっと顔を伏せ、 「す、すみません……」とだけ小さくつぶやいて、その場を離れてしまった。 小さなサンダルの音が、路地裏に遠ざかっていく。 俺はただ、ぽかんとその後ろ姿を見送ることしかできなかった。 ──本当に、違う子だったのか? それとも、眼鏡を外しただけで、あんなにも印象が変わるものなのか? けれど、その後ろ姿は、普段の教室では絶対に見せない、 どこか自由で、欲望に忠実な横顔だった。 まるで、誰にも知られたくない「欲求」を抱えているみたいな──。 「あれ、やっぱ……高嶺さん、だったよな……」 胸の奥が少しだけ、くすぐったくなった。 夏の午後の静かな路地裏。そこに残ったのは、かすかな風と、あの白いフードの記憶だけだった。

