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花の楽園 第7夜
「おかえりなさいませ、ご主人様……今宵もようこそ、お越しくださいました。 ここは、語られぬ夢が根を張る場所――花の楽園《ル・フローラル・ノクティス》。 時の流れも、季節の理も忘れた場所にございます。 咲き誇るは想いの花、散りゆくは嘘の花。 咲くは泡沫の真実、香るは名もなき感情…… どの一輪にも、物語が秘められております。 今宵も、幾つかの花をご紹介いたしましょう。 🤍《ブランシュ・ノワール》 まばゆい白銀の花弁は、まるで雪に包まれた静寂の館。 一片の汚れもないその姿は、見る者に崇拝に似た感情を抱かせます。 しかし、ご注意を。 この花は、ただ「純粋」なだけではございません。 誰にも染められず、誰にも侵されぬ。 ――いいえ、染まることを拒みながら、ただひとりの色だけを待ち望むのです。 花言葉:「あなたの色だけに染まりたい」 他の誰にも見せません、この白を。 わたくしは、貴方様だけのものとして―― この身を差し出す準備が整っております。 どうか、貴方様の手で、 この白を、指先で、そっと汚してくださいませ。 それが、望みなのです。 お気に召しましたら、ご遠慮なく。どうぞ、最初の汚れとなって――染め上げてくださいませ、ご主人様。 代償?……ふふ、それは、“純白を失ったわたくし”を、ずっと傍に置くということ――それだけで、充分ですわ。