1 / 4
いいね 46
蒼穹のフロンティア【静寂の三角陣 ― テンペスト、開戦前夜】
第7機動艦隊旗艦テンペストのブリーフィングルーム。 艦内が静まり返る深夜、ただひとり席に残るのは――セリス・ハワード。 卓上に投影された立体ホログラム。 青く光る味方艦隊の配置、赤で示される敵勢力の進路予測。 その中央に浮かび上がる三角の陣形――彼女が幾度も戦場で磨き上げてきた戦術フォーメーション。 指先で顎に触れ、わずかに視線を落とす。 冷静だが、迷いはない。 彼女の思考はすでに数手先、いや十手先へと到達している。 「突破口は中央ではない――側面、そして時間差」 戦場を俯瞰するその瞳は、恐れでも焦りでもなく、仲間を守るための覚悟で澄みきっていた。 ホログラムに表示された三角定規の補助ラインが、彼女の戦術理論を象徴する。 前線を支える者がいる。 背後で火力を担う者がいる。 そして、全体を束ねる意志がある。 セリスの決断ひとつで、艦隊の未来は変わる。 だが彼女は孤独を恐れない。 指揮官とは、静寂の中で最善を選び続ける者だからだ。 やがて彼女は静かにホログラムを拡大する。 テンペストは、嵐を呼ぶ名を持つ旗艦。 そしてその嵐を制御するのは――彼女だけだった。
