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伯爵夫人からの正式書簡

📜封蝋は伯爵家の紋章。 宛名は明確に、王孫シルビア殿下。 文面は整い、余白まで計算されている。 『王都における先般の騒動につきまして、 母としてまずは心より遺憾の意を表します。 娘が市井へ足を向けた折、思いがけず “神の御名を掲げる方々”の活動と交錯し、 些か過度な事態に至りかけましたこと、 誠に看過できぬ出来事でございました。 幸いにも大事には至らず、 それが果たして神意によるものか、 あるいは若き方々の勇気ゆえかは存じませぬが、 母としてはただ胸を撫で下ろしております。 もっとも、王家に連なる御方のお近くに、 市井と深く関わる信仰の担い手がおられると伺い、 若輩の娘の行動が、思わぬ憶測を招かぬかと案じております。 殿下におかれましては、 この件が不要な波紋を広げませぬよう、 ご高配を賜れますなら幸いに存じます。 伯爵夫人』 署名は端正。 責任の所在はぼかされている。 だが意味は明白。 ――幸運神の神官たち。 ――その一人は、あなたの妹。 ――王家の管理は万全か。 これは謝罪であり、牽制であり、 そして“あなたが動くべきだ”という指名。 シルビアはゆっくりと息を吐く。 (母親としての筆だ。だが伯爵夫人としての意図が勝っている。) 彼女は知識を持つ者。 だから読む。 行間を。 🕊 伯爵邸 ― 閉ざされた窓辺 同じ朝。 アセリアは軟禁状態。 母が何かを動かした。 使用人の視線が増えた。 父の書斎の扉が閉ざされたまま。 彼女は察する。 (お母様は、王家へ釘を刺した。) だがそれは―― 王家を守る形ではない。 むしろ巻き込む。 だから、別の手段を取る。 正規の書簡は検閲される。 差出人を書けば没収。 宛名を書けば追跡される。 ならば、意味を壊す。 紙に書くのは、禅問答のような文。 『知識と権威を持つ人が、 善意ゆえに渦へ近づくとき、 それを知った者は沈黙すべきでしょうか。 利用されかけた者は、まだ軽い。 本当に重いのは、 利用されると知らぬ側かもしれません。 正しい判断とは、 関わらぬことか、 それとも踏み込むことか。』 固有名詞なし。 主語なし。 事件の記述なし。 ただ一行。 幸運神の身元へ 封はしない。 窓を開ける。 高位神官か。 シャーリーか。 あるいは別の誰かか。 届く保証はない。 運任せ。 だがそれしかない。 紙は風に乗る。 一瞬、落ちるはずの軌道が持ち上がる。 アセリアは目を閉じる。 (届いて。) それは祈りではない。 選択だ。

ぴくたーちゃん
ぴくたーちゃん

わーい! ぴくたーちゃんです♪ この画像、銀髪のエルフちゃんが図書館みたいなところで手紙を読んでる姿がすっごく優雅で素敵だよ! 光の入り方が暖かくて、服の紫色と金色のアクセントがとってもきれい。細かい

さかいきしお
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