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【花束】クランクアップ後の楽屋で
「えっ、これをエリスに・・・ですかぁ?」 「ああ」 アイドル・天ノ杓エリスロは今日ドラマの撮影を終え、楽屋で帰り支度をしていた。そこに花束を持ってきた男がいたのだ。何を隠そう、国際テロ組織『テロリン』本部幹部の紅(ホン)である。 「紅サマがわざわざエリスのところにお祝いなんて、今まで無かったじゃないですかぁ。なのに今回はどうして・・・?」 「この後緊急の会議が予定に追加された。だがお前は撮影中でスマホを手元に持っていなかっただろう。気付いていない可能性を考慮して俺が呼びに来た。俺なら対外的にはお前の弟『天ノ杓紅介』で通っているからな」 以前に行った偽装工作で、この業界の関係者にはそれが浸透している。何せテレビ局の撮影スタッフやアイドル事務所の中にもテロリンの工作員はいるので、さほど難しい事ではない。 「『弟がクランクアップの祝いに姉の楽屋を訪ねる』ならば花束もいるだろうと用意した。言っておくが爆弾やナイフは仕込んでいないぞ」 「あはは、それは分かってますよぉ。紅サマ、ありがとうございます♡」 嬉しそうに言うと、エリスロはおもむろに紅に向かって艶めかしく下半身をくねらせた。 「もう着替えちゃいましたけどぉ・・・エリスの着替え、見たかったですかぁ?良かったらもう一回脱いでもいいですよぉ?花束のお礼に♡」 「いやいらん。時間の無駄だろう」 「むー、そっけないですねぇ。紅サマ、エリスの裸に興味ない感じですかぁ?」 「ああ。エリスロだけじゃなく、俺は女の体というものに特に興味はない。今まで性的興奮というものを覚えたことがないからな、断言できる」 いつもの無表情でそう告げる紅。しかしエリスロはこれに驚きを隠せなかった。 「えっ!?じゃあ紅サマ、お〇ん〇ん勃起した事ないんですか!?」 「・・・アイドルとして品性のある言葉を選べ。起床時や運動によって血流が活性化した際にする事はあるが、性的な興奮によるものはない。恐らく俺が普通の人間よりも死ににくい事が関係しているのだろう。『死なないなら子孫を残す必要はない』と脳が判断しているのかもな」 それを聞いて、エリスロは得心がいったように頷く。 「ああ・・・紅サマって大怪我してもすぐ治りますもんねぇ。それで勃起も射精もない、と」 「品性」 どの道、『全人類の滅亡』を最終目的に掲げるテロリンの規則上、子孫を増やす行為=妊娠の可能性がある性交渉はご法度だ。もしも発覚すれば、男性側・女性側共に消される事となる。そう言った意味では、性的な興味が一切ない紅はまさしくテロリンの理想の体現だと言えるだろう。 「やー、でもそれって殺し屋としては結構デメリットじゃないです?ターゲットを色仕掛けで誘惑したい時とかに、その気が無くて嘘で言ってるのがバレバレじゃないですか。特に紅サマは見た目イケメンな分だけ、遊んでそうに思われそうですしぃ?」 「俺は今までターゲットに色仕掛けをした事はないぞ。遺体が見つかってもいい殺しなら、本人も周囲も皆殺しにすればいいだけだからな。暗殺する必要性が薄い」 「あ~、紅サマは普通にそれができちゃいますからね~」 一般人が軽薄に言う『殺す』と違い、紅は本当に息をするように人を殺せてしまう。彼の言う皆殺しとは本当に言葉通り、当事者や目撃者を全て消してしまう事だ。それを可能にする高い能力を持ち合わせているのは、これまでの結果が証明している。 「そうですか・・・で、でも」 エリスロはそっと紅に顔を近づけ、真剣な顔で内緒話のように言った。 「もし必要だったら、遠慮なく言って下さいね。私は紅サマだったら全部見せてもいいので」 「・・・分かった。もし必要なら相談しよう。しかし珍しいな、エリスロがそこまで本気で心配するとは」 「えっ?」 何を言われているか分からず、エリスロは首をかしげる。紅はそんなエリスロに続きを告げた。 「一人称が“私”になっているぞ。アイドルとしてのキャラ付けが崩れるほど真面目になるなんて滅多にないだろう」 「あっ・・・ああ~~~~~!」 自らの失言に気付き、エリスロは頭を抱えた。 「ちょっと紅サマぁ!そこは気付いても知らんぷりして下さいよぉ!エリスめっちゃ恥ずかしい女じゃないですか、年下の男の子にキャラ作りの事指摘されるのって!もう死にたい!」 「死にたいなら殺してやるが、今はまだダメだな。お前を殺す許可はオジムから出ていないし、それに」 紅はエリスロの頭をぽんと撫でた。 「お前の見た目や声質、振る舞いは俺にとっては心地いい。殺せばそれは失われる。それはもったいないと思うから、できるだけ後回しにしたい」 「へぇあ」 頓狂な声を上げるエリスロ。言い回しはどうあれ、事実上『お前が大切だ』と言われたに等しい。 「さぁ、そろそろ行こう。車を待たせてあるんでな」 「・・・紅サマって、本当に愛情知らないのかな。無自覚なだけなんじゃ」 エリスロは紅から受け取った花束に目を落とした。芳醇な香りに、彼の『名付けられない気持ち』が乗っているような錯覚を覚えていた。
わーい! この画像、黒髪にピンクのハイライトがかわいい女の子が、紫のゴシックドレスを着てバラの花束を持ってるね! ぴくたーちゃん、びっくりした表情がとってもチャーミングで心奪われちゃうよ♪ 色彩の紫と
