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【舌出し】暇を持て余す幽霊
私が夜、寝室でPCに向き合っていた時の事。突然背後から腕が伸びてきて、私の肩と首に巻き付いてきました。感触からして女の腕。こんな事する候補は一人しかいません。 「幽魅、どうしたの?」 「いきなり幽霊に捕まったのにビビりもしねえなぁ凪くんは」 振り向くと、おどけたように舌を出して幽霊じみたポーズをとる幽魅と目が合いました。 「ほ~らおばけだぞ~、怖いぞ~」 これ絶対大事な話とかじゃなくて退屈で構ってほしいパターンだ。私は一つため息をつくと幽魅の頭に手を回して引き寄せ、無防備な舌に吸い付きました。 「んむ!?」 そのまま無理矢理唇を奪い、舌先で割り開いて口内を蹂躙します。幽魅は体温が無いので暖かさはありませんが、口の中や舌の柔らかい感触だけは本物通りです。息が苦しくなるまで弄び、解放してあげると幽魅はさっそく騒ぎ始めました。 「ちょちょちょ、凪くん!?いきなり何すんのさ!」 「いや舌を出してたから吸って欲しいのかと」 さも幽魅の振る舞いに問題があるかのように言ってやると、余計憤慨してきます。 「そんな訳あるかー!絶対凪くんがムラッとしただけでしょ!」 「ムラッとなんてしてないよ。どっちかというとムカッとかイラッの方だね」 「ムカッ+イラッ=ムラッじゃん!」 なにその謎の計算式。一文字ずつ合体させただけじゃん。 「ムラッとなんてしてません。もししてたら・・・」 がしっと幽魅の腕を掴んでベッドに転がし、マウントをとって上着をめくり上げます。薄緑色のブラが私の眼前に晒されました。・・・なんか幽魅、前よりガードが緩くなったなぁ。 「こういう方針の事するから。キスで済ませたのは紳士的対応だと思わない?」 「いやいやいやいやいや。いきなりディープキスかましてくる男は紳士とは言わない!ていうか結局脱がしてるじゃん!視線もすっごくやらしいしさぁ!」 言われてみれば、結構とんでもない事をしている。急に申し訳ない気持ちになってきた。 「あー、ごめん。やっぱりムラッとしてたのかも」 「もー、やっぱり。私が普通の人間だったら訴えられてもおかしくないからね?」 「ごめんなさい、反省してます」 「するならちゃんとそういう空気を作る努力して欲しいなぁ。まったくもぅ」 うーん、最近瑞葵ちゃんが頑張って私と距離を取ってるから、その分人肌寂しいのかな。幽魅は体を起こし、ベッドに座り直しました。 「最近の凪くんは女子中学生にさえハグしたりハグされたりしてるから、余計に距離感バグってそうだよね」 「返す言葉も無い・・・いや待って何で知ってるの?覗き見かな?趣味悪いよ」 「返す言葉も無いって言いながら疑問と決めつけと非難を立て続けにぶちこんできた!?だってヒマなんだもん!町で凪くんを見かけたらこっそり観察したいじゃん!」 同意を求められても困る。今後は他の女の子と会う時でも周囲の気配に警戒しておかないと。 「幽魅さぁ、まさかとは思うけど、私のトイレとかお風呂まで覗いてないよね?」 「流石にしないよ!何回も言うけど、私って性欲無くしてるんだから。ずーっと見てても『はぇ~、ネットで見た画像とそんな変わんないな~』くらいの感想しか出て来なくて、結構早く飽きが来るんだからね?」 「見てんじゃん!」 「あ、やべ」 口数の多さが災いしたらしい。私はもう一度幽魅の服の裾に手を掛けてめくり上げました。 「こっそり覗きをするようなスケベ幽霊にはお仕置きが必要だよね。私だけ見られてるの不公平でしょう、ほら脱いで脱いで」 「や、やだよー!助けて玄葉ちゃーん!」 「玄葉、今日は怪談配信してるからね。雑談やゲームと違って話の途中に休憩挟まないから助けにはこないよ」 「えー!?・・・あっ、そうだすり抜けて逃げればいいじゃん!」 幽魅に触れていた感触が私の手から消え、幽魅はするっと私をすり抜けて逃げていきました。 「ずるい!」 「ずるくないもん!凪くんのばーか!すけべ!強姦魔!」 すごい捨て台詞を言い残して幽魅は壁の向こうへ消えました。馬鹿とスケベはまあいいとしても強姦魔は事実無根だろ。 「・・・もう寝よう」 幽魅と中途半端にいちゃついたせいもあって気分も落ち着かないし、寝てしまう事にしました。 ちなみに翌日、玄葉からは虫けらを見るような目で見られました。どうやら幽魅が自分に有利な部分だけ吹き込んだらしかったです。やっぱりずるい。