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雨粒の見切り ーー緑の襲撃者・両生類の逆襲ーー
しとしと降る雨。 軒先に立ち尽くすブロント少尉は、額に一筋の水を垂らしつつも、静かに構えていた。 「……この落下角度、湿度、気流……見えた。雨粒、来い──!」 次の瞬間、 「――秘技、雨粒見切り流・逆風双脚!!」 空気を裂く鋭い回し蹴り! ミニプリーツスカートがひるがえり、蹴り足が宙を舞い―― ぴしゃっ! 「見切った……! この雨粒は、もはや私の目を欺けぬッ!!」 狙いすましたように、落ちてきた雨粒は両断され、霧のように分散した。 「完璧だ……今宵、誰にも濡らさせはしない――」 ぴょーん 「ぬわあああああああああああ!!?」 ぺと 「ぬわっ!? なんか顔に……緑の……!? くっ、Covert Hopperか!?!? 」 どこからともなく飛来したアマガエルが、キメ顔の少尉の顔にしっかり張り付いた。 「ぬ、ぬめるッ!! これが自然の反撃かッ!!」 少尉がばたばたと地面に倒れ込むと、背後から現れた富士見軍曹が、ため息とともにカエルをそっと剥がす。 「はいはい、少尉。動かないでくださいね……もう、何してるんですか」 「ふ……ふふ……完璧な勝利のあとには、必ず反動が来るものなのだ……!」 軍曹は、少尉の額をタオルで拭きながら、小さく笑った。 「……まったく、勝手に“自然と戦って”負けてるの、少尉だけですよ」 そして雨はまだ、優しく降り続けていた──。