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サングラアンブレラ作戦
教頭と富士見軍曹が、「昼休みに私服で打ち合わせ」―― それは、ブロント少尉の軍人魂に衝撃を与えた。 「うん、これはデートだ。間違いない。 打ち合わせに私服とはけしからん。おしゃれとは戦場のためにするものなのに……!」 尾行に入るブロント少尉。 だが、彼女の尾行スキルは「対象から隠れてていれば隠密」という致命的な誤認識に基づいていた。 金髪ポニーテールにミニスカート、士官帽をかぶった少女が茂みでごそごそ―― 「きゃっ、今なにかいた?」 「え、あれって軍服?」 「写真撮っていいですか?」 「まま~」 「こんなところにお尻があるぞ~(棒でつんつん)」 などと周囲の視線を浴びていたが、本人はまるで気にしていない。 というか気づいていない。 やがて広場に差し掛かる。遮蔽がない。 「くっ……我、ここに来たりて判断す―― いや、目立たない変装が必要だ!」 視線の先には、日傘をさして清楚な雰囲気をまとった富士見軍曹。 「なるほど、傘だ。傘こそ変装の要……!」 少尉は近くのコンビニでビニール傘を買い、通りすがりのペンキ屋に声をかける。 「おじさん、このペンキは黒ですか?」 「ああ、油性のだ」 「ありがと。代金は士官学校の教頭先生につけておいてください」 そして即席のサングラス(日傘に黒ペンキを塗ったもの)を作りあげる。 「これが……新型光学偽装装置――コードネーム、サングラアンブレラ!」 さっそうと差しながら尾行を再開するが、当然異様なほど目立つ。 すれ違う人が二度見するレベル。 「……軍曹、なんか後ろにやべーのいませんか?」 「はい。たぶん、あの人です」 二人は振り返り、目が合う。 「……少尉、何をしているんですか?」 「えっ!? い、いや、まさかお二人、デートとかしてませんよね!?」 「いえ、手のかかる上官の言動対策を協議していただけです」 無言のまま軍曹は、サングラアンブレラを取り上げ、拳骨を振りかぶる。 「ッ! 軍曹、やめ――」 ドガァン! 「うごぉああああ!! 脳がぐるぐるしてお眼目に影が~!」