1 / 5
部活、始めました。~ラグビー部の悪夢編~
「しょっ、少尉? その格好は……」 ラグビー部のグラウンドに現れたブロント少尉の姿に、男子士官候補生たちは言葉を失った。 彼女は、昔ながらの“紺色ブルマ”姿だった。 白地に紺のラインが入った体操着は、少女らしい華奢な体をより一層引き立てる。 それでいて、どこか漂う“戦場の匂い”。 「え? だめだった? この部、走るって聞いたから……これが走る時の正式装備だと思って……」 ほんのり頬を染めながら、ブロント少尉が首を傾げる。 「いや、別に……禁止されてるわけじゃ……ないですけど……」 「っていうか、なんでラグビー部……?」 士官候補生たちは目を合わせず、うっかり視線が合おうものなら“なぜか心臓が圧迫されるような”プレッシャーを感じてしまう。 ブロント少尉は、部員たちがごちゃごちゃ話し合うのも構わず、一人アップを始めていた。 軽やかなステップ、無駄のない筋肉、汗ひとつかかない無表情――。 「……少尉、ガチじゃん……」 「なにが“たのしく運動”だよ……」 部活開始。 紅一点ブルマのブロント少尉 vs 暑苦しい男たち、十数名。 ──結果、誰一人彼女にタックルできなかった。 「うわっ、すみません今行こうとして……いや、変な意味じゃなくて! でもブルマでしょ!? 無理だよタックルとか!?」 「目が……目が怖いんですよぉぉぉ!!」 そして、まるで狩猟本能だけで動いているような軽やかさで、ブロント少尉は次々とトライを決める。 殺気はある。だがそれを超えて“美しい”。 まるで戦場を舞う花のような、謎の華やかさと緊張感があった。 試合後―― 「はぁ……たのしかった。ラグビー、けっこう動くね。うん、また来てもいい?」 「も、もちろんですけど……できれば、その……もうちょっとだけ服装を……」 「えっ? なんで? これ、運動着だよ? ぴったりで動きやすいし、風通しも良くて最強だと思うんだけど……」 にこっ、と笑って無自覚に核心を突く少尉に、候補生たちは目をそらすしかなかった。 【部活日誌:ラグビー部】 「今日もブロント少尉は爽やかに無双していきました。 タックルできた者はゼロ。 心折れた者、多数。 次回、作戦会議を行います。(誰か、ブルマ禁止って言ってくれ……)」