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【おなか】コマメちゃんのからだのひみつ
最近、コマメちゃんのアップデートが楽しみです。何と言いますか、娘の成長を見ているような気分。そんな訳で今日も金剛院邸を訪れ、コマメちゃんを探します。他のメイドさんに聞いたら、すぐにいる部屋の場所を教えてくれました。やっぱりメイドさん達の間でも注目の存在なんだな、コマメちゃんは。 教えてもらった部屋のドアをノックすると、中から「どうぞ」と無機質な声がしたのでドアを開けました。中では丁度コマメちゃんが充電をしていたようで、上半身に何も着ていないコマメちゃんが例の充電ケーブルを折りたたんでいるところでした。私は咄嗟に視線を逸らします。 「ああ、パパ。いらっしゃいませ」 「ご、ごめんねコマメちゃん。お取込み中だったみたいだね」 コマメちゃんの胸は金属製で硬いのは知っていますが、見た目上は普通の女性の胸なのでちょっと気まずい。コマメちゃんは人間じゃないのもあって羞恥心が設定されていないのか、気にした様子もなくブラを手に取ってつけ始めました。そこでようやく私はコマメちゃんから視線を逸らさなくて良くなります。メイド服の下は、意外と関節部とかが隠れてなくて、ちゃんとロボットだって分かる見た目なんだな・・・。 「ピピー。どうやらパパはコマメの体に興味津々のご様子。御覧になりますか?」 そう言いながら、コマメちゃんはスカートを脱いでしまいました。私は慌てて「それ以上脱がないでいい」と制止して、何とか事なきを得ました。下着しか身に着けていないコマメちゃんの姿は、ロボットだと分かっていても少しドキドキします。顔がちゃんとある分、ランジェリーショップのマネキンより臨場感があるせいかな。 「こうしてみると、意外と関節が分かるんだね。人工皮膚っていうのは全身に貼るものじゃないの?」 「いいえ、人工皮膚は全身を覆う事はあまりありません。全身に人工皮膚を貼らない場合は見た目が不格好になりはしますが、服の下を他人に見せる想定で作られてはいないので問題ありません。人工皮膚は製造コストが高い事と、耐久性が低い事、そして貼り替えのメンテナンスの手間がかかるため、水泳などのより高い防水性が必要な場合のみ全身を覆います。そのため基本の活動時は関節が露出していますが、防水仕様にはなっているので多少の雨ならこの状態でも耐久可能です」 「え、じゃあお風呂・・・というか、体の汚れはどうしてるの?」 「はい、入浴行為は自発的には行いません。全身に人工皮膚を貼っていない場合は、漏電の危険性もゼロではありませんから。普段の体表の汚れは清拭によって除去します」 なるほど、人間と違って湯船につかって体を温める必要は無いんだもんな。汗もかかないし、トイレにも行かない訳だから拭くだけで十分って事か・・・。でもそうなると、ちょっと気になるところが。 「コマメちゃん、ちょっと変な事聞くけどさ。それならどうしてちゃんとした下着をつけてるのかな。あっ、いやあの裸が見たいって事じゃなくてね、下着や肌着って汗とか排泄の汚れから服を守ったり、逆に性器に汚れやウィルスがつかないようにするためって機能があるからさ。メイド服の下を他人に見せない想定なら、ロボットなんだし無くても機能面では問題ないんだよね?」 「はい。確かに、パパの言う通りの用途では必要ない衣服となります。ですが、開発段階において上下の下着はそれぞれ必要とされました。パンティの方は、スカートの中が見えた際に何も履いていないと気まずく思われる方がいらっしゃるだろうという事です。女性器にあたるパーツはありませんが、一応のエチケットを考慮されています」 確かに、それはそうかも知れない。もっと人間に見えないようなロボットならともかく、コマメちゃんの外見だと万一スカートがめくれた時とかにパンティが無いのは問題だろう。 「じゃあ、ブラの方は?こっちはスカートと違って、そうそう胸が見える状況にはならないよね?それに、充電する時にもわざわざ脱ぐ手間が増えるんじゃ?」 「はい。実はその充電に関係しています。乳首型充電端子が動く度に服の裏地に擦れて劣化が早まるのを抑制する目的、及び意図しない放電の防止目的です」 そっか、ブラ無しだと乳首が擦れちゃうのか・・・これは納得だ。ブラでしっかり端子を覆って保護している訳ですね。 「あとは、不要な感覚の遮断のためでもあります。コマメの全身には静電容量方式を中心とした複数方式によるタッチセンサーが備えられており、布越しでも人の手の接触を感知する事ができます。しかし感知の度に電気信号が発生する関係上、全身が鋭敏だと処理が多くなり、エラーの発生率が上昇します。よって、あまり触られないであろう胸部と股間部、臀部は下着によって保護し、メイド服と合わせて布地の厚みを増す事で感知の頻度を落としています」 「全身にタッチセンサー!?凄い技術だね」 「試してみますか?コマメが今から目を閉じますので、好きに触ってください。言い当てて見せましょう」 そう言うとコマメちゃんは目を閉じて待機姿勢になってしまいます。私はコマメちゃんの頬、顎、唇、おへそ、胸などを指先でチョンチョンと触っていきましたが、見事に全部言い当てられました。スワイプ・フリック・ピンチ操作や、何本の指で触ったかまでです。胸なんてブラ越しだったのに。 「凄いね、コマメちゃん。ありがとう、よく分かったよ」 「はい。それではコマメはお仕事に戻らせていただいてもよろしいでしょうか?」 私は頷くと、最新技術に感心しながら自宅に帰りました。 翌日、私は花梨さんに呼び出され怒られていました。 「いくらあの子がロボットだからって、あんまりあの子にエッチな悪戯しないでもらえます!?私がログを見る時、あの子の主観視点で見るんですからね!?あの場面、早渚さんに身体をチョンチョン触られてるみたいでずっとムズムズして落ち着かなかったんですから!」 「大変申し訳ありませんでした。今後は控えますのでどうか許して下さい」 私が頭を下げていると、コマメちゃんがやって来て口を挟みます。 「花梨先輩、パパの触り方はとても優しかったので、もしコマメが人間なら気持ち良かったと推察できます」 「急に何の話!?早渚さんの触り方が気持ちいいとか今関係ないでしょう!?」 声を荒げる花梨さんでしたがそれを意に介さずに、コマメちゃんは続けてとんでもない発言をしてくれました。 「花梨先輩はコマメのログ動画を私的にコピーして自室に持ち帰り、何度も見返しながら『これくらいかな・・・』などと発言しつつご自身の胸を触っておられましたので。そうまで気になるなら実際パパに触っていただいてはいかがでしょうか?」 私はコマメちゃんの発言の途中で『これ聞いたらマズいやつ』と判断し咄嗟に逃げ出します。が、顔を真っ赤にした花梨さんに即刻捕まって「記憶を消して下さい!」と叫ばれながら締め落とされる羽目になったのでした。