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ミリシラ様の異世界百景その10「ニュアジュー高原」
地球の皆の者、こんクエスト~!!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ! 今日は星を見にニュアジュー高原まで来ておる・・・んじゃが、曇っておるのう。ここ、晴れてる時は綺麗な星空が見えるので評判なんじゃがな。風魔法じゃリーチが足らんし、どうやって雲をどかすかのぅ・・・。 あ、そうじゃ!この近くにはあやつが住んでおった!地球人、ちょっと待っててくれ~! 待たせたな地球人!ローガン・メ=クラウチを連れてきたぞ。 「ミリシラ、おめえ誰に喋っちょるんじゃい。急にじじいを連れ出して何の用なんじゃ」 ローガンは冒険者時代によく組んでたんじゃ。1km先に吊るした腕輪の中に矢を通すほどの弓の名手で、人呼んで“鷹の眼”のローガンと呼ばれた狩人の中の狩人じゃな。顔は優男じゃったから、ファンも多かったのう。 「おめえそりゃ50年も前の話だろうがよ。今はもう老眼もいいとこ、まさしく“老眼”のローガンだよ」 今日の狙いはそんな精密じゃないからいいんじゃ。ローガン、お主の弓であの雲を射抜いてくれんか?矢はこれ使ってくれ。先端に超極大の爆裂呪文つめてあって、一定の高度に達するか何かに刺さると大爆発するようにしてある。間違っても落とすなよ、町一つ消し飛ぶ威力にしてあるからワシら助からんぞ。これで曇り空を吹っ飛ばすって寸法じゃ。 「おめえ相変わらずバカで無茶な事考えるなぁ。全知全能の二つ名が泣いちょるぞ」 うるさいわい。ほれ、さっさとやらんか。お主のスキル『サジタリウスの矢』ならあの高さまで届くじゃろ。・・・あれ、『せつなさみだれうち』だったか? 「サジタリウスの矢で合っちょる。まあ、目が碌に見えんでも空気の感じや風の流れ、音や匂いとかで大体様子は分かるからな。あの辺狙えばいいか?」 うむ、そのあたりでよかろう。よし撃て!・・・うん、いい感じに飛んで行ったのう。あっ、地球人、一回映像と音を切るぞ。多分凄い爆音と昼間になったみたいな閃光が走るからな。 「おいおめえそれ射る前に言え」(ブツッ) 地球人、もうよいぞ!ほれ見てみぃ、素晴らしい快晴じゃ!綺麗に星が瞬いておるぞ! 「おめえのせいで俺の目はチカチカになっちょるんじゃが。星なんぞ見えんわい」 文句言うな、上等な酒を持ってきておるからしばらくぶりに飲もう。ほれ、そこに座れ。ワシお主の膝の上に座るから。 「おめえ孫より重てえなあ」 ああ?ワシのようなぷりちーな乙女に何て事言うんじゃ!お主の孫いくつじゃ!? 「孫はまだ2歳だ。体重は10kgくれえだな」 10kg・・・よりは確かに重い、のう。くっ、おのれ。なんでお主80歳にもなろうかって言うのに孫そんなに若いんじゃ。 「冒険者やってたから結婚が遅かったんじゃい。あとおめえが周りにいたせいで他の女が俺に寄り付かんときちょる。おめえにプロポーズするのも考えなくもなかったんだがなぁ」 お主と結婚かー。あの当時だったらワシOKしたかも知れんぞ。 「俺はしなくて正解だと思っちょる。おめえに産ませた子供なんて何しでかすか分かったもんじゃねえ」 お主失礼すぎんか。まあ良いわい、時間を巻き戻す魔法なんて存在せんからな。結局は今じゃ。今、ワシはお主の事をかつての仲間の一人としてちゃんと愛しておるぞ。 「その言葉、50年前の俺が聞いたら舞い上がったろうになぁ」 だから『たられば』に意味は無いというに。あ、話し込んでおって地球人をほったらかしじゃった。 「ところで、さっきから言ってる地球人って何の事じゃい」 後で説明してやるわい。ではな、地球人たち、また会おう。 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~!! 「おつカブールって何じゃあ、まさかお疲れさまとシッタカブールをかけちょるんか?」 おいローガン、挨拶につっこむのはご法度じゃろ!