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賢い動物たちの伝承
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「うーん、本当かしら」 シルビアが、賢者の学院の図書室でうなっている。 座っている閲覧テーブルには、大量の書籍や資料が並べられている。 どうやら、幻獣・魔獣・獣人について調べているらしい。 以前、ゴルドンとダキニラが、危険な虎の獣人に襲撃された件はまだけりがついていない。 『かつて 神の 大戦あり 戦から逃れし神々は 追っ手の竜王を欺くために 獣の姿にその身を変えた その際、己の獣の姿に似せて従者を作った 獣人はそれらの従者の末裔なり』 シルビアは、身近な獣人である父親違いの妹、ダキニラを思い起こす。 彼女がそんな神聖な存在と思え・・・・・・、いや、彼女は幸運心の神官だった。 そもそも、狐や他の多くの獣人は人から分かれた存在のはず。 このごろ、やけに賢い動物に巡り合うことが多い気はしているが。 シルビアは読み続ける。 『神獣は、その身が神であったときと同じく、各々役割を持つ。 役割にふさわしい、獣の身を選んだともいわれる 従者も役割にふさわしき力を賜っている 』 『それぞれの神獣が司る物 銀狼:周期・秩序 大蛇:結界・不変 灰色熊:封印・浄化 ~ 双尾狐:両面性・商い 虚偽? 』 「大熊猫、パンダね?タケノコ?粗食?なにこれ?」 とそこで、シルビアの手が止まる。 「猛虎:復讐・・・・・・」 その記述を食い入るように見た後、シルビア起き上がって伸びをする。 「何万年前の話かしら。神様がまだ、おわすとしても、その従者が今時この辺りをうろついているかしら」 『ここにいるニャ~』 ふと声が掛けられた気がしてみると。 隣のテーブルで、いろんな本がとっ散らかって放りだされていた。 隅っこに、小っちゃい黒い子猫が寝転がっている。 「こら!!まったく。猫の神獣様のお仕事は、図書館で悪さする事かしら?」 シルビアは、黒猫を摘まみ上げながらため息をつくのだった。