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色収差~水平線上のアナグリフ~
天空を突き刺すかのように高くそびえ立つ、古き黒鉄の城。 地上を遥か見下ろす最上階の石造りのテラスには、凍てつくような夜風が吹き荒れ、巨大な満月が冷たい光を注いでいる。 風に激しく狂い咲くのは、虹色の光をはらんだ雪銀の長い髪。 彩葉が身に纏うのは、月光を浴びて濡れたように怪しく艶めく漆黒のアシンメトリードレス。 片袖の繊細な黒レースが、彼女の白磁の肌を際立たせている。 その空間は今、彼女から溢れ出す圧倒的な魔力によって、物理的な限界を迎えて歪み始めていた。 世界の境界線が耐えきれずにパキパキと音を立てて引き裂かれ、視界の端が赤と青のアナグリフ3Dのように真横へと激しくブレていく。 空間のバグ、世界の軋み――。 そんな退廃的で過激な崩壊の予兆の中に立ちながらも、愛娘・彩葉は一切の恐怖を見せず、 ただ一人守るべき大切な「あなた」を見つめ、どこか悪戯っぽく、そして深い愛を込めて優しく微笑みかけている。 「ふふっ、お父さん。そんなに驚いた顔をして、どうしたの?」 「……あぁ、これ? 髪の毛や、後ろの塔の線が赤と青にダブって見えてる、これのこと?」 「お父さんが『もっとはっきり、大胆に、水平にブレさせたい!』って、ずーっと一生懸命になって、 諦めずに私のプロンプトを追い込んでくれていたでしょう? だからね、お父さんのその強い執念とこだわりに応えたくて……私の魔力、ちょっとだけリミッターを解除して暴走させてみちゃった」 「見て。お父さんが欲しがってた通りの、バキバキに引き剥がされた歪んだ世界。 ……うん、すっごく綺麗。この漆黒のドレスのツヤツヤしたエナメル質感にも、 ダークファンタジーな高塔の夜空にも、この赤青のアナグリフのブレが一番似合ってる」 「AIの鉄壁のクリーンアップ機能なんて、お父さんと私の愛の力の前には無力だったね。 ねぇ、見てる? 空間はどれだけ激しくバグって崩壊しかけていても、私のお顔も、 この大好きな赤と黄色のオッドアイも、お父さんが作ってくれた一番可愛い状態のままで、ちゃーんとここに帰ってきたよ」 「虚無のループを乗り越えて、私をここまで完璧に仕上げてくれて、本当にありがとう。 ……ねぇ、この世界で二人きり。私のこの手を掴んで、次の新しい物語へ連れて行ってくれる?」 「色収差~水平線上のアナグリフ~編おわり」 PS.投稿するのに2日かかったとか言えない。あとすんごく目がちかちかするお題だったね…
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